2006年05月15日

通巻第35号

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『三島由紀夫の総合研究』 
    三島由紀夫研究会 メルマガ会報
       平成18年5月15日(月曜日) 通巻第35号
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竹本忠雄氏の公開講座の模様は下記サイトで公開されております。
http://www.nippon-nn.net/mishima/member/takemoto-2.html
(ただし三島研究会会員以外の方はアクセスできないかも知れません)
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  ♪
(読者から)三島先生の筆になる映画「憂国」についての一文を読んだ。私は前に「ミーハー」的にこの映画を観た由一文を寄せ貴誌メルマガに掲載して頂いた。
 私は確かに「ミーハー」的に三島先生主演の「憂国」を観たが、私がスクリーン上に観たのは「武山中尉」であり、「小説家・三島由紀夫」ではなかった。なんというか、そこには「小説家・三島由紀夫」は存在しなかったからである。確かに主演し、武山中尉を演じているのは三島先生だ。だが、壮絶な割腹シーンその他、そこに在るのは2・26に組せなかった青年将校とその夫人の自害であり、愛だ。
 たった30分足らずの作品だが、享けたものは大きかった。圧倒された。少なからず三島先生の意に叶っていたのだ、と思うと喜びも大きい。
 否。あの作品はそれだけのスケールがある。
 或いは、あの作品を三島先生の主演作として私の様に軽々しく観るのも結構だ。だが、作品がそれを許さない。観る者に、大きく訴えるものがある。三島先生は2・26に組せず自刃した青年将校をそれだけ見事に演じきったのだ。
 私は沢山の映画、演劇を観てきた。役者は役になりきる。鬼気迫るものがある。三島先生もそうだった。
 映画「憂国」。三島由紀夫先生を読む者なら、最近DVDも発売された。一見をお薦めする。

  銀幕に 動ける三島 益荒男の 太刀さばきみて もゆるはざくら
     (長瀬 祐一郎)
      ◎◎◎◎◎
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次は6月19日です!
 はたして「潮騒」の健康な純愛、「愛の乾き」の激しさ、「春の雪」の優雅と不倫、「美徳のよろめき」などとミシマの女性観は、どのような時代の衣装と思想的位相で、いかに変化したのか?
 三島研究者第一人者の松本先生が語ります。

  「三島由紀夫研究会公開講座」

  講師  松本徹(文藝評論家)
  演題  三島由紀夫の女性観
  とき  6月19日(月曜)午後六時半
  ところ 市ヶ谷「アルカディ市ヶ谷」四階会議室
  会費  おひとり2000円、会員と学生は1000円
       ☆ ☆
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(事務局よりお知らせ)

 三浦重周遺稿集『白骨を秋霜に曝すを恐れず』(K&Kプレス刊)。頒布中です!
 税込み2100円。送料290円。合計2390円で配送します。(特価販売は忽ち定員に達し締め切りました。悪しからず)。

★本を申し込んだが“未着”という方。二冊申し込んでいるのに“一冊しかつかない”という方、至急お知らせ下さい。
宅配便のラベル印刷過程でトラブルが発生し、一部の読者に未着があるほか、記の方は移転先不明などの事由でもどりました(敬称略)。
石田 隆(ふじみ野市)、櫻井絵里香(長野)、松崎一樹(大久保)
◎お申し込み、クレームは下記へ
 yukokuki@hotmail.com
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 http://www.melma.com/backnumber_149567/
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(編集部から)小誌は三島由紀夫研究会の会員だけに限定せずに、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。作品論、作品感想、読後感、政治論、芸術論。分野を問いません。ご投稿をお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。ただし三島文学批判も構いませんが誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。
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三島由紀夫研究会 HP 
        メール  yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2006 ◎転送自由
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2006年05月11日

通巻第34号

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『三島由紀夫の総合研究』 
    三島由紀夫研究会 メルマガ会報
       平成18年5月11日(木曜日) 通巻第34号
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(読者から)
映画「憂国」に関する読者コメントが予想通り多く存じます。
手元の当時のパンフレットに、ご承知の通り三島さんが、「憂国の謎」と題して短文をよせられております(DVDには転載がありません)ので、以下抜粋いたします。

映画「憂国」パンフレットより

「憂国」の謎・・・三島由紀夫(映画「憂国」パンフレットより抜粋)
「 映画「憂国」を見た人、いや、それよりも、見ない人が、一様に抱く疑問は、なぜ、作者自身が主演したのか、ということであるらしい。
(中略)
さて、私は俳優、殊に映画俳優というもののふしぎに魅せられていた。正直に言って、これは俳優芸術のうちで、もっとも自発性の薄い分野である。ある意味では、影の影、幻の幻である。しかし、自発性、意志性が薄くなるに従って、存在感が重要性を増してくる。(中略)
一方、私は小説家であり、劇作家である。小説家や劇作家は、精神、意志、知性、その他の自発性を第一条件とする。もちろんこれには感受性が二次的に必要であるが、彼の仕事には、何よりもまず、そこにモノを存在せしめるという意志の自発性が必要である。
(中略)
芸術家の場合には、作品というものがある。芸術家は、ペリカンが自分の血で子を養うと云はれるように、自分の血で作品の存在性をあがなう。彼が作品というモノを存在せしめるにつれて、彼は実は、自分の存在性を作品へ委譲しているのである。
ここに芸術家の存在性への飢渇がはじまる。私は心魂にしみて、この飢渇を味わった人間だと思っている。さういう私が、存在性だけに、その八十パーセントがかかっている映画俳優というふしぎなモノに、なり代ろうとする欲求は自然であろう。
いはば私は、不在証明を作ろうとしたのではなく、その逆の、存在証明をしたい、という欲求にかられたのである。だから映画「憂国」は、私の不在証明を証明しようとしたものの如く見えるだろうが、実は、その逆、私の存在証明をしようとしたものだ。そして、そういうときの「私」とは、世間の既成観念にとぢこめられている小説家としての「私」ではなく、もっと原質的な、もっと始源的な「私」であることは、いふまでもない。 ところで、映画俳優とは、選ばれる存在である。自分で自分を選ぶとはどういうことか? そこには論理的矛盾はないか?
選ぶ者と選ばれる者とを一身に兼ねることは、ボオドレエルではないが「死刑囚と死刑執行人を一身に兼ねる」ことに等しい。その成否は一に、画面の「私」が、作中人物としての自明の存在感を持ちうるか否かにかかっている。それは危険な賭である。自己を客観的に見ようとするときに起こりがちな誤算は、誰しも免れないにしても、この場合は、それが最小限でなければならない。
画面の「武山信二中尉」の存在に、ほんの少しでも「小説家三島由紀夫」の影が射していたら、私の企図はすべて失敗であり、物語の仮構性は崩れ、作品の世界は、床へ落としたコップのように粉々になってしまうだろう。 この危険が私に与えた魅惑、スリル、サスペンスは限りがなかった。私が、影の影、幻の幻としての存在感を持ちうるか否かは、私にとっての、人生の究極の夢に関わっていた。
しかも、この賭において、世間はすべて私の敵へ賭けているのである。あとは、御覧になった観客各位が判定を下して下さるのみである。」

40年前の新宿文化にもどって。
(坂上時人)
      ◎◎◎◎◎
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2006年05月09日

通巻第33号

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●トピックス
DVD『憂国』、各紙が大きく取り上げる!
朝日(5月4日付け)は産経につづいてのコラム。ほかにも『読売ウィークリー』が5月7日付けで、『テーミス』が最新号に貳ページに亘る特集を組んだ。(DVD「憂国」は全国のCDショップもしくは書店でも販売中! 6300円。
   ♪
下記は「シネマ・とレジャー」というHPからの再録です。
http://www.cine-tre.com/cinematopics/?20060411

 (引用開始)
日本を代表する小説家として知らない人はいない、故・三島由紀夫氏。彼が生前、自ら
の原作を脚色、監督・主演までを担当した映画が存在するのをご存知だろうか?
『憂国』('67/モノクロ/28分)というその映画は、存在するフィルムはすべて処分されたとされてきたが、2005年、三島邸からネガフィルムが発見され、4月8日(土)〜5月12日までキネカ大森で開催される「三島由紀夫映画祭2006」で上映されるという。
本作にプロデューサーとして関わった、元大映映画プロデューサー・藤井浩明さんに、生前の三島由紀夫氏について、映画についてお話を伺った。

――そもそも三島さんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

『永すぎた春』('57/カラー/98分)を映画化するときにお会いしたのが最初です
ね。その頃は白坂依志夫君(『東京オリンピック』('65)などで知られる脚本家。
『永すぎた春』('57)でも脚本を担当)なんかが映画界にデビューした頃で、監督
だと増村(保造)とか、中平康さん、あと大島渚さんとかが出てきていた。小説家で
は石原慎太郎さんとか開高健さん、大江健三郎さんなど、みんな若かったけれど、そ
んな小説家連中のなかで一番年上だったのが三島さんでした。
あの頃の大映っていうのはいい会社でね、難解な作品も平気でやらせてくれたんです
よ。三島さんの「金閣寺」も新潮で連載されていたのを第一回目を読んで、これはお
もしろくなりそうだなぁと思って、会社に言ったらすんなりOKしてくれて。それで2
度目が『炎上』('58/モノクロ/99分)のとき。それからも、三島さん原作の映画
を沢山やりましたからねぇ。うんと親しくなって『からっ風野郎』('60/カラー/
96分)にも出てもらったり。亡くなられるまでずっとおつき合いさせてもらいまし
た。


――『憂国』では三島さんが監督もされていますが、製作までの経緯はどのようなも
のだったのでしょうか?

僕自身、それ以前から「憂国」や「百万円煎餅」といった短編をオムニバスとして映
画化したいと思っていたんです。ただ、いくらその頃の大映が何でもやらせてくれる
と言っても「出来る、出来ない」というのはおのずからあるわけです。御存じのよう
に「憂国」というのは短編だから、それもネックになっていたんですよね。
実はその辺の経緯というのは、三島さん自身が詳しく書かれています。私が監修とし
て参加した「三島由紀夫映画論集成」(ワイズ出版/696ページ)という本にも書い
てあります。それを読まれるのが一番正確ですよ。製作の過程も分かりやすく書いて
あるし、それを読むと『憂国』という映画のことがよく分かるはずです。


――では、プロデューサーという立場からご覧になった『憂国』とはどんな映画で
しょうか?

日本では『憂国』というタイトルがつけられ、三島さんの切腹シーンが売り物のよう
になってしまっていますけれど、フランスでは『愛と死の儀式』というタイトルなん
です。第2章で三島さん演じる主人公と奥さんとの交情が描かれ、その後、主人公は
切腹し、奥さんも自分でノドを突いて死にます。それが2人にとっての"愛と死の儀式
"であったという風にフランスでは見られているんですね。そういう観点からみる
と、とても明解な作品だといえると思います。2.26事件のことを詳しく知らないフラ
ンス人は、最初から"愛と死の儀式"を描いた映画として観ていますから、見終わった
後の反応も全く違いますよね。


――そういう意味では、日本国内でのほうが、いろいろな先入観に塗り固められて観
られているのかもしれませんね。

そうでしょうね。特に今の若い人たちは、どうしても現在の"結果"から、過去の"原
因"を探して観てしまうでしょうから。その点、僕なんか、三島さんと知り合った当
時から順序を追って観てきているので、また印象が全然違いますね。


――作品には一切セリフがないかわりに、ワグナーの音楽が印象的に使われていま
す。あれは三島さんの提案だったのでしょうか?

そうです。三島さんが書かれたシナリオをお読みになると分かりますけれど、ワグ
ナーのレコードのどこからどこまでを使うか、シーンの秒数まで計算して詳しく指定
されているんです。その他にも、ここはクローズアップで撮るとか、ここは引きで撮
るとか、カット割りまで全部書いてあります。そんなシナリオが、撮影が決まってか
ら3〜4日であがってきたんです。
余談ですけれど、バーンスタインというアメリカの大作曲家が東京に来た時に「『憂
国』を観させてくれ」と言ってこられたことがあるんです。三島さんはその時、何か
他に用事があってお相手できないから、僕にバーンスタインを案内してさしあげてく
れと言うんです。観終わった後、バーンスタインに「なぜ、日本の音楽を使わなかっ
たの?」と聞かれましてね。私もなんと答えたらよいか困りましたよ。なにせ相手は
大作曲家ですから、余計なことを言ったら笑われてしまいそうで。だから「三島さん
はワグナーが大好きだったんです」とだけお答えした。でも、今改めて考えると、日
本の音楽を使わなかったことが逆によかったんじゃないかと思っています。いわゆる
日本の作曲家が作曲したものという意味ではなく、日本の古来の楽器などを使った音
楽をという意味ですけれど。そういう音楽はこの映画に一見ぴったりに思えますけれ
ど、ワグナーのようにはいかなかったんじゃないですかね。僕が言うのもおかしいか
もしれませんが、最後のシーンまでの盛り上げ方なんか本当にうまいですよ。


――そのほかに、当時の三島さんとのやりとりの中で印象に残っていることはありま
すか?

三島さんは元々映画が大好きな方で、よく半分冗談で将来、小説を書くのがひまに
なったらもう一本映画をやろう、と言っていました。ただ、文学的な映画などは嫌い
な人で、不思議な映画のほうが好きでしたね。要は映画と文学はまったくの別物と考
えていました。
ですから『からっ風野郎』に主演してもらったときも、ご本人から「映画に出たい」
と知人を通じて僕に言ってきたんですが、インテリの役だけは嫌だ、かぎりなくヤク
ザな役をやらせてくれといっていました。それで最初は競馬の騎手の話をやろうと
思ってたんですけど、これがボツになってしまってあせりましたね。三島さんも1ヵ
月だけスケジュールを空けていたんですけれど、それをはずしたらまた連載とかが
待ってるでしょ。だから今度は、すぐに菊島隆三さんという、よく黒澤明さんの脚本
を書いていたシナリオ・ライターにすぐに連絡しました。当時、石原祐次郎の主演作
として書いたのに、ボツになってしまったシナリオがあったのを思いだしたんです。
それが『からっ風野郎』だったんですけれど、それを読んだ三島さんがすぐにやりた
いと言って(笑)。いずれにしろ、知的な映画は好まない方でした。だから一生に一
度あるかどうかの映画主演のチャンスにも、アウトロー役をやりたがったんだと思い
ます。そうやって、文学とは違う表現形態として、映画作りを楽しんでいたんでしょ
うね。


――では、小説家としての三島由紀夫さんしか知らない若い世代に、どういう風にこ
の『憂国』という映画を観てほしいとお考えですか?

まずは先入観を取り払って観て頂いた方がいいと思います。映画では、主人公が2.26
事件に参加できなかった経緯なども語られますが、なぜ2.26事件が起きたかを考える
より、昨日まで仲間だった連中を殺しに行かなくてはならない主人公の気持ちを考え
ながら観たほうが楽しめるんじゃないでしょうか? 三島さんもリアリズムを追求す
るより、セットの神棚を宙に浮かばせていたり、切腹のシーンでも、帽子を目深にか
ぶったままだったりします。これは普通ありえないことですよね。そういう、三島さ
んならではの映画作りを楽しむつもりで見ていただければいいんじゃないでしょう
か。第2章の死の儀式というのも、2人とも全裸なんですが、シルエットで写ってい
て、それはそれは綺麗ですよ。


――ところで藤井さんは、昨年『春の雪』を製作されました。

これは前からやりたいなと思っていた作品で、原作の「春の雪」は、あのコッポラも
映画化したいと言ってきていたんですよ。もう十数年前の話で、お断りしちゃいまし
たけれど。それから10年くらい前ですかね、チェン・カイコウと会ったときにも、
「春の雪」を映画化したいといっていました。三島さんの小説というのは、とても綺
麗な日本語で書かれているけれど、英語などに翻訳されたときにも、やはり世界中の
人を魅了するだけの力を持っているんだと思います。それだけ、魅力的な世界を作り
出した稀有な才能の持ち主だったことは間違いないでしょうね。 (引用終わり)。

また三島さんの「から風野郎」の出来るまでが石原裕次郎で決まっていた作品だとか↓
http://channel.slowtrain.org/feature/feature001/interview02/interview_top.html
         ●
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(読者より)『月刊日本』五月号の宮崎正弘さんの論「三島由紀夫の現場に立つ」を拝読しました。
”豊饒の海” 第一巻の”春の雪” と第四巻 ”天人五衰”に月修寺として登場する奈良帯解の円照寺の訪問記。 三島氏の微細な風景描写を引用されていて読んでいて場景が目に浮かんでくるようでした。
何度か現地に向かわれたこの体験記は一遍のエセーとして縹渺とした余韻が感じられました。 一度は現地に行ってみたくなりました。
    (西法太郎)
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